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ホラーを薦めます

映画のジャンルで何が好き?なんていう実に程度の低い質問などが飲み会や新入社員歓迎会で交わされているであろうこの四月半ば、というかやや遅れている感は否めないけれど、どうせ遅れているのはこの時期に限ったことでもあるいはこのことに限ったことでもないしむしろ遅れていない脳の領域が自分の中にどれほど残されているかという疑問は問うに難しく答えるに易しくつまりサービス問題であって、まぁ答えは言わずもがな察知するのが日本の文化であることは周知の事実であるけれど、「さっち」って昭和年代のあだ名みたいですね。

で、ホラーなんですが、「どんなジャンルの映画が好き?」というのは実に愚問であるといえます。映画をジャンルなどという杓子定規で分けてしまうと後に残るのは、主演俳優名、監督名、音響監督名、原作者名、受賞賞与名、配給会社、配給年度、全米 No.1 期間、まぁあとはおすぎだかピーコだかの映画評論家の評価くらいしか分別ができなくなってしまいます。その項目わずかに九項目!つまり最初にジャンルなどという括りでもって映画を観てしまっては損だということを言いたいがために文章を書き始めたのですが既に逆効果の雰囲気が色濃く遺憾です。

とかいってもやっぱり映画をジャンルで分けることは非常に愚行なことに変わりはないと考えられます。

例えばラブストーリーなんてジャンルを設けてしまってはどうなると思いますか?もう、映画の中身が恋愛一色でしょう。春真っ盛りのお目出度い映画になってしまうでしょう。連中の頭がお目出度いって話ですよ。
例えば推理ものなんて名前すら曖昧なジャンルになったらどうなると思いますか?もう、映画のメインテーマが推理ですよ。最後まで観ないともやもやするじゃないですか。二時間の映画だったら一時間四十分はもやもやですよ。しかも不可解な事件が起こる映画だってわかりきってるじゃないですか。
例えばヒューマンドラマなんていう要素すら曖昧なジャンルになったらどうですか。もう目も当てられませんよ。ヒューマン、ですよ。ドラマ、ですよ。人間の一切出ないドラマ要素の一切ない映画がどこにあるんだと。エクソシストだってメリン神父とあと悪霊みたいなののヒューマンドラマにだってなろうってなもんですよ。それは無理がありますが。

要するにどういうことかと言いますと、ジャンルなんてものを決め打ちして映画観に行ったりすることが馬鹿馬鹿しいってことです。ラブストーリー観に行って「感動したー」とか毒にも薬にもならない感想ならまだしも、「優しい気持ちになれた」とか「恋がしたくなった」とか言ってる人はもうアレですよ。映画を観に行ったと言うかジャンルを観に行ってる感じです。ラブストーリー観るときは、ラブは観ない。虐げられるサブキャラの悲哀を観る。主人公のラブラブの裏に隠された悲惨な人生を想像する。全然関係ない映画に例えるなら、ロード・オブ・ザ・リング観るときはボロミア主人公の脳内設定で観る。二作目以降にも名前は出てくるから問題ない。って感じです。

そういうわけでタイトルと内容が全く逆行してるわけですが、そんな状況で敢えてジャンルを決め打ちするのならホラーをお勧めしますよ、と。ホラーいいですよホラー。ホラー。
まずホラー、自由度が高い。怖かったら何でも大体オッケー。オマージュでもパロディでも真剣に怖くてもいい。ある程度映画通にしかわからないネタを仕込んでも許されるし、微妙に人類に警鐘鳴らしてもカッコいい。主人公の理不尽な行動も「人物が描写しきれていない」とか酷評されない。なんてったって展開に理不尽さが必要だから。これは作り手の話なんで観る側には全然関係ないですが。
あと何でも内包できる。ラブストーリーも SF もモンスターもサイエンスも青春も、何でもあり。エロスだって当然あり。アクションも CG も皮肉も風刺も投げやりも全部あり。実際映画館で観るまで、自分が何を観に行くのかわからない。わからないから面白い。ビデオとか DVD 借りるときもしかり。だってもう、タイトル伏せるけど、スプラッター(血しぶきとか飛び散るタイプのホラー)借りたつもりが学芸会の発表のやつかと思ったりしたし。本当に間違えて借りたかとか。間違えてたかも知れない。まぁいい。

あと、ホラー好きは大抵ディープ。狭く深い。普通の映画通は特にホラーに拘らない。もう全盛期の過ぎた分野だって認識されてるし事実そういう部分もなきにしもあらずな雰囲気であることは否めないと今週末のお天気予報でお姉さんが堂々宣言してしまうくらいのアレかも知れない。とにかく狭くて深い。大抵会話もくだらない。ゾンビの動きひとつとかで盛り上がれる。あと、どのサブキャラが死んじゃうかわかるようになる。顔つきとか言動とかでわかる。というか、それくらいホラーには浅い部分がある。これは残念。

まぁそういうわけでホラー観ませんか。最近流行ってるみたいだし。

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